現代音楽/実験音楽の代名詞とも言える、ジョン・ケージの「4分33秒」。ピアニストがピアノの前に座り、鍵盤蓋を開け、そして4分33秒間なにも演奏しない……という、音楽史上最大の問題作にして革命的作品である。

「4分33秒」 ―― 音楽とは聴こうとする意思や集中力によって生まれるもので、その姿勢が音楽を生み出すのだと、聴く行為そのものを投げかけてくる非常に大胆な作品。ケージは、演者の服の擦れる音、会場の他の客の立てる咳払いや呼吸音など、それら全てが音楽を“聴こうとする意思”が生み出した“音楽”なのである、と示しているのだ。

1952年に発表されて以来いくつものバージョンが“演奏”されてきた「4分33秒」は、ケージの代表作にして、音楽史を語る上で外せない楽曲のひとつ。そんな歴史的作品を、オーストリアのデスメタルバンド・Dead Territoryがカバーした。しかも、その“演奏”が素晴らしいクオリティだと、アメリカの公共ラジオ局<NPR>が賞賛しているのだ。

「演者がスタジオに登場し、セッティング、耳栓、ギターのノイズ、ドラムのロールとカウント、そして……無音」という解説どおり、5人のメタルヘッズたちは各々の持ち場で戦闘態勢に入ると、4分33秒間の“演奏”を文句なしのパフォーマンスで繰り広げた。

この楽曲を“メタル”にアレンジした彼らは、コンサートホール/劇場のクラシック好きやアカデミックな聴衆だけでなく、全ての人々に開かれた楽曲であることを見事に示したと言えるだろう。<NPR>も「ケージという作曲家は、音楽という広大な宇宙を探索する中で常にユーモアを忘れなかった。彼らもまた、そのことを理解し引き継いでいる。『4分33秒』の数々の名演に連なる、素晴らしい演奏だ」と賛辞を送っている。

生前、この楽曲を自身でも演奏し、さらに大胆なアレンジを施してきたケージも、きっとDead Territoryのバージョンを聴いたら大いに喜んだことだろう。

ちなみに普段の彼らはこんな↓感じ。

http://www.openculture.com/2016/07/john-cages-silent-avant-garde-piece-433-gets-covered-by-a-death-metal-band.html