6月23日に行われた国民投票により、イギリスが欧州連合(EU)を離脱することが決定した。これは、日本を含む世界中に蔓延しつつある国粋主義、つまり右傾化を象徴する流れのひとつとも言われているが、“ブラック・シェイクスピア”を自称するポリティカルなラッパー・Akalaが、欧米に根強く残る人種差別/外国人嫌悪について、2015年に出演したTV番組で繰り広げたスピーチが再び注目を集めている。

akala

昨年5月、英BBCで放送されたスコットランドのコメディアン/ライター、フランキー・ボイルの特番『Election Autopsy 2015(直訳:選挙分析2015)』に、スペシャルゲストとして招かれたAkala。この番組は、同年5月7日に行われたイギリス総選挙(英国議会の下院議員を選出する選挙)において、デーヴィッド・キャメロン率いる保守党が勝利したことを受けて放送された特番のようだ。

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フランキー・ボイル(以下FB):今回の選挙は“イギリス国民が筋金入りのレイシスト(人種差別主義者)だ”ってことを証明したわけだけど、さあ、どうする?(ベルリンの壁みたいに)イギリスを壁で取り囲んじゃう?(笑)

イギリスではどうやら、移民に反感を覚えているのは大人だけではないらしい。労働党のトリスタン・ハント氏がダービーで(選挙)キャンペーンをした時の映像があるんだ。

ハント氏誰に投票するか決めてる?

男の子  うーん、UKIP(ユーキップ)。(※1)

ハント氏おぉ、いいね。どうして?

男の子  えーと、イギリスから外国人を追い出すため。

 

FB: ハハハ……って、ぜんぜん笑えないし! 労働党は国境での(人の出入りの)管理をもっと厳しくするだろうね。奴らは公式サイトで買えるマグカップを作ってるんだ(「入国管理を厳しくしよう。私は労働党に投票する」と書いてある)。オフィシャルの人種差別マグだよ。UKIPなんか暗闇では逆効果の安全ジャケットまで作ってる。

(※1:「UKIP」イギリス独立党。2015年の選挙では保守党、労働党に次いで第三党に。2016年6月のEU離脱/残留の国民投票では離脱を促していた)

果たしてイギリスは、ゴリゴリの人種差別主義者なのか? それを話し合うため、ラッパーで詩人、そしてジャーナリストのAkalaをスタジオにお呼びしました! 来てくれてありがとう。このVTRについてどう思う?

Akala(以下A): あまりにも複雑すぎて、ひとことでは言えないな。とはいえ、人種について話をする時、僕らは(俯瞰した全体像ではなく)偏見からくる個人の行動に目を向けてしまいがちだと思う。UKIPがたびたび出てくるのもそれが理由だ。彼らは世間の反感を買うような、大げさな発言をするからね。だけど残念なことに人種問題っていうのは、もっとずっと陰湿なものだと理解しなくちゃならない。そして「個々が持つバイアス(偏見)」「構造から見た人種差別」、それに「特権意識」はそれぞれ違うものだってことを理解するには、歴史的な観点も必要なんだ。

いわゆる“グレート・ブリテン(直訳:偉大なブリテン島)”という概念は、イギリス(大英帝国)がこれまで地球上のほぼすべての国を侵略してきた事実と深い関わりがある。(侵略した国を表した)地図だってあるし。詳細はググってみればわかるよ。

それから“我々”イギリス人の偉大さなんて考えは、英小説家ラドヤード・キップリングの詩『白人の債務(The White Man’s Burden)』なんかの(正当化された)帝国主義と深く関係があるんだ。「愚かなブラウン野郎(アフリカ人や、インド系など褐色の肌を持つ人々?)を文明化させてやらないとな(=白人による植民地支配の正当化)」といった感じでね。だけど、その“愚かなブラウン野郎”は何千年もの間(白人よりも遥か昔から)文明と共に発展を遂げてきたんだよ(笑)。

そこで、イギリスにおける構造的な人種差別についてだけど、この国の刑務所の収容者の人種別の格差は、アメリカのそれと同じようなものなんだろうか? そうだね、間違いなく同じだ。それから、警察に身柄を拘束されたことで命を落とす人の格差は? これも同じだね(=どちらも有色人種の割合が多い)。

2011年(リビア内戦時)、僕らは「リビア人が好きだから、そこに民主主義(という名)の爆弾を落としたいんだ」と言われていた。それから5年も経たずに、同じ紛争から他国に逃れようとして海で溺れ死ぬ人たちを見捨て、移民を“ゴキブリ”呼ばわりする女性の文章を全国紙(『ザ・サン』紙)が掲載している。

移民を“ゴキブリ”呼ばわりすることで、その人たちを殺してもいいという免罪符を自らに与えているんだよ。これはハッキリさせておきたい。人間が非人間となる(人間扱いされない)ことは、その人たちを殺してもいいという“免罪符”みたいなものだ。過去の歴史でもそういうことが行なわれてきた。

さて、僕らの祖父母の時代にドイツという国がイギリスを爆撃した。今のドイツ人は理論的に言えばナチスの子孫となるわけだけど、彼らはコモンウェルス(オーストラリアやニュージーランドを含むイギリス連邦)の人々よりも気軽にイギリスへと出入りしている。かつてコモンウェルスは(イギリスと共に)ナチスと戦ったっていうのに。

もともと移民はどこから来たんだっけ? “immigrants(移民)”について議論するとき、その“移民”っていうのはオーストラリアやニュージーランドから来た人たちを指しているのかな? ボリス・ジョンソン(前ロンドン市長)がオーストラリアを訪れて「僕らは文化的には同じだよね」なんて言ってたけど、それってアボリジニ(オーストラリア先住民)も含まれてるのかな?(笑)。

FB: 我々は“expat(在外の人たち)”と呼んでますね。

A: そう、彼らは自分たちをそんな風に分類するんだ。白人の移民は“在外の人たち”で、非白人/有色人種を“移民”と呼んでいるのさ。

移民と言うけど、例えば英ベッドフォードシャーにある「ヤールズウッド難民移送センター」(※2)に行けば、どんな人たちが収容されているのかが分かるよ。そこにいるのはニュージーランドから来た白人たちじゃないよね。つまり、僕らには“構造的な特権”と、“陰湿かつ克服が困難なバイアス(偏見)”があるんだ。

(※2:「Yarl’s Wood Immigration Removal Centre」=イギリスに来た移民を文字通り“移動”させる施設)

 

 

女王のドイツの従兄弟たち(ヴィルヘルム2世?)によってイギリスは焦土と化した。第二次世界大戦後、そんな国を立て直すためにやって来たアフリカ人やアジア人に対してイギリス人が見せたのは、嫌悪だった。こんなの不条理以外のなにものでもないでしょ? かつてイギリスが植民地化していた国の人々は、二度の世界大戦で(イギリスのために)戦ってくれたんだ。念のため言っておくけど、インドでは250万もの人が戦ってくれたんだよ。(第二次大戦では)アメリカではなく、インドやロシアに救われたって言ったほうが正確なのにさ。そんな人々とその子孫へのリアクションは、構造的な偏見と特権主義の一例と言えるだろうね。

それ(非白人に対する嫌悪)を象徴しているのは、“タワーハムレッツ区”と“カナリー・ワーフ(ロンドンの再開発地域で誕生した金融オフィス街)”と言えるかもしれない(※3)。この地区の大半を占めているのはインドやバングラデシュ出身のベンガル人コミュニティだけど、その中のどれくらいの人が(ホワイトカラーが働く)カナリー・ワーフでトイレ清掃“以外”の仕事をしているだろうか?

(※3:ロンドン東部の特別区。カナリー・ワーフはこの南部にある)

偏見や反感は、世界中どこにでもある。僕の祖父母の国(ジャマイカ)では、ドイツ人はたくさん受け入れたけれど、LGBTの人たちに対する嫌悪は根強い。ジャマイカにはうんざりするくらいホモフォビア(同性愛嫌悪)な人がいるんだ。キリスト教原理主義に反する! ってね。悪いことをするのはいつも、褐色の肌を持つイスラム教徒だと思いたいのさ。

ジャーマンウイングスの副操縦士が山に突っ込んで150人を道連れにしたとき(※4)、僕はオーストラリアにいたんだけど、(たとえ大量殺人犯であっても)白人というだけで表現が変わるんだ。オーストラリアのメディアは、アンネシュ・ブレイヴィーク(※5)を“テロリストのような”手法で犯行に及んだと報じていた。考えてもみてほしい。ブレイヴィークは100人近くを殺したというのに、(白人だというだけで)テロリスト“のような”と報じられるんだよ。

(※4)「ジャーマンウイングス9525便 墜落事故」
2015年3月 副操縦士のアンドレアス・ルビッツ(白人)が故意にフランス南東部の山に機体を激突させた(死者150人)。
(※5)「アンネシュ・ブレイヴィーク」
2011年7月にノルウェー連続テロ事件を起こしたノルウェー人(白人)。死者は77人、負傷者は100人以上。

FB: ブレイヴィークはイスラム教徒についてもおかしなことを言ってたのにね。

A: “白人は善人”という考え方はヨーロッパのものではないけど、陰湿な意味合いが含まれている。地中海でおぼれ死んだ700人もの人々は、そんな目に遭うはずのない白人だっただろうか? もしそうだったら“ゴキブリ”呼ばわりされることもなかったよね。

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FB: 残念なことに、差別はイギリスだけの問題ではありません。オーストラリアのニュース番組では、ひと組の双子にまつわる“スゴい”映像が放送されました。

 

 

男性アナウンサー双子の姉妹のうち、1人は明らかに黒人で、もう1人は白人です。

女性アナウンサーイギリス在住の双子のアルマ姉妹は、異なる人種の家庭に生まれました。マリアは母親のジャマイカの血を受け継ぎました。褐色の肌に茶色い目、それからカーリーな黒髪。ですが、ルーシーは父親の白い肌を受け継ぎました。良かったね! それにストレートな赤毛と青い目を持っています。

(※スタジオからどよめきと失笑)

A: まあ、この女性アナウンサーは少なくとも正直ではあったよね(失笑)。

FB: オーストラリア人ってのは、世界でも有数の人種差別主義者だね。彼らは世界に「黒人は自分たちの国の人ではない」と示したようなものだよ。神が皮膚癌を作り出したのがその理由さ(※6)。そういえばオーストラリアでは、有色人種は“動植物”だと表記されていたとか。1967年まで?

(※6:オーストラリアは世界で最も皮膚癌の発症率が高い国。なお、FBのこの発言は少なからず非難されている)

A: そう、1967年までは法的に“動植物(flora and fauna)”に区分されていた。動物なんだってさ(苦笑)。ボリス・ジョンソンが「イギリス人はオーストラリア人と文化的に同じ」なんて言ったのも、あながちデタラメじゃないのかもね……。

<書き起こし -了->

 

Akalaの言葉は、約1年後に多くのイギリス国民がEU離脱を選択したことを考えると、より深刻さを増して心に響くはずだ。在日韓国人などに対し、まるでKKK(クー・クラックス・クラン:白人至上主義団体)と見紛うほど差別的かつ悪質なヘイトスピーチ(憎悪表現)やデモなどが行われている近年の日本にとっても、決して他人事とは言えないだろう。