1988年に劇場公開された映画『ぼくらの七日間戦争』。そのストーリーは、学校や親に厳しく管理されていた少年たちが廃工場を占拠し、大人たちに反旗をひるがえすというものだ。

いつの時代も頭の固い残酷な大人たちは、ほとんど反射的に他愛ない「自由」を踏みつぶそうとする。そして少年たちは抑圧を受けつつ、自由になれる場所への憧れを抱き、時にアジールを手に入れるべく行動を開始する。

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とはいえ大人たちの力は強大だ。映画のストーリーと同じく、懸命に作り上げた楽園も、大抵は壊されてしまう。しかし世界を見渡せば、そうした空間が奇跡的に守られ存続しているケースも決して珍しくはない。コペンハーゲン郊外にある「クリスチャニア」という奇妙な街は、その代表的な例といえるだろう。

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1970年ごろ、米軍基地の跡地にヒッピーたちがスクウォッティングしたことから始まったクリスチャニアでは、デンマークの法律が適用されることはなく、窃盗や暴力行為、銃や刃物の所持を禁止するなど、自らが定めたルールのもとで自治されている。今回は、そんな独自のカルチャーを国内外に広めようと1996年に設立されたブランド「ALIS(アリス)」を紹介しよう。

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「ALIS」 のコンセプトは、イギリスの児童文学を支配していた教訓主義から児童書を解放したルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』へのオマージュであり、クリスチャニアに根付く<アンダーグラウンドカルチャーによって世界中を支配する窮屈な習慣や考えを打破しよう>とする想いが込められている。設立を記念して開催されたヒップホップ・フェスティバル「SUBKULT」は、こうした考えを反映してか、なんと18日間ぶっ通しで行われ、今でもヨーロッパ中で伝説として語り継がれている。

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そんな「ALIS」はストリートウエアの製作により、その存在感を発揮しているが、サポートするスケートチーム「ALIS SKATEBOARD」の影響力は決して無視することはできない。

始まりは1998年の夏。「スケートボウルを建設しよう」というアイデアが住民から提案されたことからだ。ALISの背後にある「クリスチャニアンを体現するアートとしてスケートボード」という思想を受け取めた彼らは、ヨーロッパの伝説的なスケーター、トム・ペニーとジャスティン・アビーに協力を仰ぎ、「ワンダーランド」と名付けたウッドボウルを作り上げる。その完成度の高さ、そしてクリスチャニアという街の存在感が放つインパクトから、ヨーロッパ中のスケーターが集まるようになり、やがて彼らの聖地と化していった。

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これにより優れたライダーたちがALIS周辺に集結。現在ではニッキー・ゲレロやダニー・カルセン、ビー・リーン・リルゼーやジョナス・ブンガー、トマス・ルーペやヴィル・ウェスターといった実力派がチームに名を連ね、その活躍は世界的なコンテストで好成績を収めるほどにまで発展している。

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また、スケートボウル「ワンダーランド」の試みは世界でも注目され、インドのゴアやミャンマー、そしてエチオピアでも、近いコンセプトを持ったスポットが作られているという。クリスチャニアの思想は世界へと広がりつつある。

自由と自治を求めて、自分たちのワンダーランドを創り上げた少年たち。それを許容あるいは黙認した大人たちのおおらかさ。そして両者の根底に流れる自由を愛する気風。日本に暮らす我々は彼らの姿勢から多くのことを学びとることが出来るのではないだろうか。

 

【URL】
Alis Streetwear – ALIS
http://alis.dk/