警察官による黒人射殺事件に対するデモの真っ最中に勃発した、米テキサス州ダラスの狙撃事件。5人の警察官が死亡するという凄惨な結果になったが、発端は警官の人種差別による行き過ぎた執行だった。これまでにも警察官による差別行為や過剰な取り締まり、暴力行為などは少なくなかった。しかし、この狙撃事件により“戦争状態”に突入したと言っても過言ではない、まさに全米を揺るがす大事件となっている。

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そんな状況のアメリカで今、急速に成長すると見られているのが“ボディカメラ”ビジネスだ。このカメラは制服に装着することで警察官の行動を記録し、不当な行為があった場合の証拠となる。

ボディカメラ最大手である<Axon>(主にスタンガンなどを扱うTaserの一部門)は、2014年に「Body 2」カメラを発表。ちょうどその頃、ここ最近の事件同様に警察官による殺人事件が続き、抗議運動“Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)”が始まるきっかけとなった。しかも<Axon>は過去2年間で年商3620万ドル(約3億8千万円)から5550万ドル(約5億8千万円)にまで成長し、他の競合を寄せ付けない独占状態だという。

現在ではロサンゼルス、ニューヨーク、首都ワシントンなどを含む33都市で3500の警察署に配備されており、2015年にシンシナティで起こった警官の過剰防衛による射殺事件を記録していたのも<Axon>のカメラだった。また、警察車両に搭載するダッシュボードカメラの部門では最大手の<Panasonic>も、ボディカメラ部門で180%もの成長を見せているとのこと。とにかく今、ボディカメラは急速に成長を遂げているビジネスなのである。

しかし、識者の多くはこのカメラが警察権力・暴力に対する抑止力になるという見方には懐疑的だ。<Axon>のカメラは常時ONで記録しているが、最終的に記録保存ボタンを押さなければ映像データは消えてしまう。さらに、データは取り外し式のフラッシュドライブに記録されるため、署のサーバーもしくは<Axon>のクラウドに保存されなければ、データを隠滅することもできてしまうのだ。

それに、警察に対する監視以上に市民への監視力を強化してしまうことになりかねないという声もある。警官が行くところ全てをカメラが見ており、いつでも記録できてしまうのから、その危惧も当然だろう。

<Axon>いわく、そういった意見は「とんでもない認識違い」とのことで、「ボディカメラによって正確な情報や証拠を入手することで、警察はより正しく権限を発揮できるようになる」と主張。今後も広く展開するつもりだという。

ボディカメラ自体、技術的にも(プライバシーや市民権など)倫理的にもまだ未成熟の技術といえる。今後、どのように市民と警察の関係に作用するか、注視するべきだろう。

http://fortune.com/2016/07/09/police-body-cameras-dallas-shootings/