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最終回となる今回は、SITE氏から自身の映像への考えや将来像を聞きながら、それらに影響を与えた作品などを紹介していただく。

※過去記事リンク→第1回第2回

 

アーティストの世界観を理解しているクリエイターが撮った映像に刺激を受ける

 

― 自身の作風はどこから身についたものだと考えていますか?

ちゃんと映像の勉強をしたことがないので、今までに観てきたTVとか映画、MVの影響が大きいです。昔から一番好きな映画監督はマーティン・スコセッシとジョン・カーペンターなんですが、自分の作風っていうか、生っぽかったりローファイでも雰囲気が良ければOKだったりする感覚はスパイク・リーやスパイク・ジョーンズ、あとラリー・クラークの影響もデカいと思います。それと『Jack Ass』になる前、スケートビデオだった頃の『CKY』シリーズを初めて観た時の衝撃もデカかったですね。

TVだと、いわゆるトレンディ・ドラマはほとんど通ってきてないんですが、再放送で観ていた『金八先生』のシーズン2とか『探偵物語』はすごい好きでした。深夜番組もよく観ていたんで、中高の頃は『カウントダウンTV』の後にやっていた『カウントダウングルーヴ』とか『BEAT UK』を録画して、プロディジーの「Voodoo People」とかダフトパンクのスパイク・ジョーンズが撮った犬のやつ(「Da Funk」)とか、UK ApacheとShy-FXの「Original Nuttah」あたりの、ちょっとでもラップが入っていたり、ブレイクビーツっぽい要素がある曲が流れたら片っ端からチェックしていました。

ちなみにOASISかBLURならBLUR派です。『Park Life』に入っていた「Girls And Boys」のMVのデーモンのファションがすごい好きで。あと、同じ世代だったら皆そうだと思いますが「元気が出るテレビ」やお笑い第三世代のバラエティ番組はひたすら観ていましたね。

 

― 80~90年代のテレビコメディの存在が大きいのでしょうか?

テレビっ子だったんで相当影響は受けていると思います。演出とか裏方の存在を意識するようになったのもテリー伊藤の弟子だったマッコイ斉藤さんって人で、最近だと『恵比寿マスカッツ』で有名だけど『SURESUREガレッジセール』とか『極楽とんぼのとび蹴りゴッデス』って番組が好きで。極楽とんぼの2人がキックボクシングとボクシングのプロに弟子入りして、それぞれ1ヶ月練習してガチで勝負させたりとか、どこまでが演出なのかわからない感じが面白いんですよ。

演出されたガチ感と言えば『高校生ラップ選手権』は1回目から出ていたMCの名前を全員言えるくらい大好きなんですが、最近流行っている『フリースタイルダンジョン』は中途半端なバラエティ風の演出がHIPHOPを舐めている感じがしちゃって、ハッキリ言って嫌いなんですよね。一応エンディングテーマのSKY-HIのビデオを2本撮ってるんですが、ノリが肌に合わないっていうか、一度も観に行こうとすら思えなくて。逆に高校生ラップ選手権は大阪でやった時以外は毎回観に行ってるし、関係者じゃないのに予選に紛れ込んで何百人ものラップを勝手に観るくらいハマっちゃって、そこからの縁でT-PablowくんやBAD HOPのビデオも撮るようになって。

『BAZOOKA』は一流の構成作家の人たちが集まって、地上波でできないことをやろうっていう実験的な場だったから、一介の高校生にドラマを紐づけていく演出の手際とか、すごく勉強になるんですよ。逆に『フリースタイルダンジョン』は出ているラッパーたちは皆カッコイイのに、これまでのMCバトルの歴史で築き上げてきたドラマとかキャラをくだらない演出でぶち壊して、挙句モンスターで出てる人たちのクリエイティビティも消耗させて、最近じゃイケてるラッパーがダサく見えるとこまで来ちゃってる。ラッパーにカラオケとか寒いことさせてんじゃねえよ! っていう。

高校生ラップ選手権を他のジャンルの音楽好きな人と見ていたら「これが今のHIPHOPだよ」って言えるけど、ダンジョンは「いや、これは違うんだ。HIPHOPはこんなもんじゃないから」って言っちゃうと思う。出ているMCたちは友達も多いし、みんなには成功してほしいけど、このままじゃ確実に一過性のブームで終わっちゃうと思うんで、ジブさんにはもっと頑張って欲しいです。

 

― 機材でこだわっているポイントはありますか?

うーん、あんまないですね。いま5万、10万払えば、普通にフルHDでもストレスなく観れるようなカメラを買えるし、編集もこだわり過ぎなければMacbook Proがあれば納品まで出来ちゃう。欲しい画を撮るために高いカメラが必要な時はレンタルで借りちゃうんで。最近までずっと使っていたCannonの7Dは8万くらいだったし、今使っているSonyのa7llも本体は20万しないくらい。良い機材も上を見たらキリがないけど、まずは使いこなせるかっていうのが大前提だし、俺は高過ぎないカメラの方がラフに使えるんで性に合っていますね。広告代理店が絡んで最新の機材使って撮ったCMより、PSGの「寝れない」を撮っていたRyu Okuboくんとか、低予算でもアーティストの世界観をちゃんと理解しているクリエイターが撮った映像の方が刺激を受けますね。最近観て衝撃的だった小林勇貴監督の『孤高の遠吠』って映画とか、出演者は全員地元の不良をキャスティングして、公道をノーヘルで逆走させちゃったりとか、プロじゃ絶対に撮らないような画を撮ってて。もちろんクオリティが高いに越したことはないですが、今は金がなくてもビジョンと気合いがあれば形に出来るし、やっぱ競争率が高い方がセンスも磨かれると思います。

個人的にはMVにドラマを入れるのが好きなので、予算が100万とか200万ある時でも撮影スタジオには極力入らないで、基本ロケで、普段は映画とかやっているスタッフを雇うことに金を使います。ゲリラ撮影もバンバンやるけど、怒られてもモノ壊しているわけじゃないし、電車にボムするリスクや緊張感と比べたら結構楽勝なんですよ。

 

― SITEくんの目指す次のステップはドラマですか?

漠然としたイメージよりストーリーがある方が好きなので、次はこれまで関わってきたアーティストをキャスティングして、映画かドラマはやってみたいですね。最近の深夜ドラマって基本低予算だけど、大根仁さんとか松江哲明さんとか園子温さん、結構名のある人たちが一つの作品をエピソードごとに持ち回りで監督していることも多くて、一時期のロマンポルノじゃないですけども、クリエイターが競い合う場としては今一番熱いんじゃないかって気がしてて。

それと、これは深夜じゃないけど、最近やっていたドラマ「重版出来!」は面白かったです。小道具で出てくる漫画の原稿をよく見たら、藤子不二雄A先生とかゆうきまさみとか、超大御所の漫画家が実際に書き下ろしていて、細かいディテールにすごくこだわってた。逆に、従来のタレント頼みのトレンディドラマは視聴率も伸びてないし、主役も事務所がゴリ押してる似たような顔の女の子と40越えのおっさんばっかだから、あれはもう放っておいても自然に淘汰されていくんじゃないですかね。

あと、Netflixで公開されている「火花」のドラマも面白かったです。実は原作は全く読んだことないんですが、照明とかカメラワークが映画クオリティで、クリエイターの本気を感じました。ネトフリは190カ国で流すことを前提に作っているから、CMの跨ぎで強引に引っ張るみたいな日本のドラマのメソッドに寄せる必要もないし。ドラマはまだまだ伸びしろがあるジャンルだと思います。

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累計発行部数251万部という異例の大ヒットを記録した又吉直樹の小説「火花」をドラマ化した作品

 

俺がずっと温めている企画はHIPHOPの学園モノで、既に12話分のプロットもあるんですけど、現状MV以外の実績が全くないので、プロットを読んでもらった時の評判は良くてもなかなか企画が通らなくて。まあ実績がない人間がいきなり製作総指揮とかやりたいって言っているわけだからハードルは高いと思いますが、最近の傾向だと一本ヒットを出せれば『クローズ』みたいにスピンオフで漫画や映画にも広げていけるし、それってまさに俺がずっとやりたかったことだから夢がありますよね。そのHIPHOP学園モノの他にもドラッグ・コメディとか、先輩に話を聞いて書いた渋谷のチーマーの実録モノとか、3本くらいは寝かせている企画があるので、海外に出しても恥ずかしくない様なリアルなユースカルチャーや、HIPHOPをテーマにした映画やドラマ、漫画が作りたいプロデューサーがいたら、ぜひ声をかけて欲しいです。

 

― SITEくんは、人生に対してわりと戦略的だなと思うことがあるんですが、若い頃からそうでしたか?

いやいや、戦略的だったらとっくに成功して金持ちになってると思います(笑)。ただ、俺から見たらすごく才能のあるアーティストに出会っても、話を聞いてみたら、それをメディアで紹介できる人が周りにいないことが多くて「じゃあ俺がやるか」って動くようになった感じで。

もとを正せば、1999年に池袋のbedで「東京ブロンクス」ってイベントを主催していた時に、グラフィティライターから提供してもらった電車のボムの写真とかキャンバスをクラブの壁に飾って、ライターをフリーで何十人も入れてライターズベンチもやっていたんですが、思い立っていくつかの雑誌に「日本にもちゃんとしたグラフのシーンがあるから、ぜひ取材に来てくれ」って手紙を書いて送ったんですよ。結局どこも取材には来なかったけど、後日<BURST>の名物編集者ジャンクユージさんからから実家に電話があって、俺が出した手紙がすごい分かりやすかったから、<BURST>で記事を書かないかって言われて、いきなりカラーグラビア4ページ、白黒4ページのグラフィティ特集を任せてもらうことになって、<BURST>の2000年の1月号でグラフじゃない方のライターとしてデビューしました。

その後<クイックジャパン>でもいくつかグラフの記事や1ページの漫画とかを書かせてもらって、そろそろHIPHOPの雑誌でも書きたいなって思っていた矢先に、当時バイトしていた幡ヶ谷のセブンイレブンに<BLAST>編集部にいた高橋芳朗さんが来店して、これはチャンスだと思ってレジ打ちながら「前に編集部に手紙を送った者なんですけど、最近他の雑誌で文章書いているんで、<BLAST>でも書かせてください」って売り込んで(笑)。普通だったらドン引きだと思うんですが、高橋さんも俺が送った手紙のことは覚えていてくれていて、すぐに日本のグラフィティの特集記事と連載ページまでもらえることになって。基本その場の思いつきが多いけど、ちょっと強引な売り込みでチャンスをもらうことが多かったので、プレゼンすることに関してはあんま怯んだりしないですね。

 

― SITEくんって編集者気質ですよね。才能をどう魅せればいいかをよく分かっているというか。

どうなんですかね? そもそも自分がヤバいと思うものをディグして見つけるのが好きだし、それをみんなに紹介して良さに気付いてもらうのが好きなだけなんですよ。会社にいた頃はA&Rや制作がメインの仕事だったから、MVも最初はちょっと有名な制作会社に外注していたんですけど、結構シンプルなMVでもすぐ100万くらいかかっちゃうし、これだったら俺がやった方がいいなと思って自分でやり始めたら、今度は映像の方が楽しくなっちゃって。もともと文章を書くのが得意なわけではなかったし、どれだけ頭をひねって書いた長い文章よりも映像の方が圧倒的に情報量が多くて、音も付いてるからアーティストの魅力が伝わりやすいっていうのがデカかったですね。

 

ストリートという幻想を追いかけてた(笑)

 

― これまでにどんなアーティストのMVを撮影してきましたか?

最初は本当にド素人だったので、easebackっていう会社でデザインと映像をやっている先輩たちが撮っていたアルファとかのMVの撮影現場で手伝いをやらせてもらいながら、ビデオ制作の大体の流れを勉強して。次に、仲がよかった韻踏合組合の「揃い踏み」っていうビデオを横からあーだこーだ言って監修させてもらって、“Ghetto Hollywood”って名前を使って初めて監督したのはMSCのTABOOとBAKUくんの「Masta Piece」っていうグラフィティの曲のMVでした。

その時はまだカメラもPCも持ってなかったからしばらく時間が空くんですが、次はNORIKIYOが1stアルバムの『EXIT』を出した時に、当時俺が勤めていたレコード会社の隣の席にGyaoでバラエティ番組の撮影から編集まで全部やっていた同僚がいたので、キーくんの「Do My Thing」って曲のビデオを俺が指示を出しながら編集してもらって、その流れで見よう見まねで自分でも編集をやり始めました。最初はSDPの面子が出ている『SDTV』っていうプロモーション用のバラエティ番組を作っていたんですが、ハンディカムでぱぱっと撮ったSEEDAくんとOKIくんの『Teriyaki Beef』が結構話題になって、知り合いだったPSGとかやけくん(やけのはら)のMVを撮ったら結構評判が良くて、知り合い以外からも仕事が来るようになりました。それがSALUくんとかAKLOくんだったんですけど、それで味をしめて映像一本でやり始めた感じです。

あと、自分の趣味じゃない仕事の時はGhetto Hollywoodってクレジットは載せないこともあるんですが、CM動画みたいのとかメジャー系のアーティストのMVも密かにやってます。あくまで趣味じゃないってだけで、もちろん手は抜かないですが、「この曲はGhettoって感じじゃないからクレジットは無い方が良いと思いますよ」とか言って、担当のディレクターをうまく言いくるめて(笑)。HIPHOPじゃないけど、かせきさん(かせきさいだぁ)とか土岐麻子さんの仕事をした時は、昔からずっと聴いていた人たちだったので嬉しかったですね。A&Rの延長で始めたっていうのもあるから、プロモーションの作戦も提案した上でビデオを撮ることも多いので、インディーの頃のSALUくんとかBADHOPみたいに1~2年かけて同じアーティストのビデオを連続で撮ることも多いです。俺は勝手に横浜シリーズって呼んでいるんですが、上ちょ(サイプレス上野)とオジロのMacchoくんの曲も結構撮ってますね。幸いなことに俺に仕事を振ってくれる人はリピーターが多いので、ホームページもないし、連絡先すら公表してないのに何とかここまで生きてこれました(笑)。仕事をくれた人たちにはただただ感謝です。

 

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NORIKIYOの「DO MY THING」を収めたアルバム「イグジット」

 

― いろんな経験をされて、最終的には映画やドラマを撮っていきたいと言っていましたが、そこを狙って生きてきたのか、それともそうなっちゃったから人生を映画で回収したいのか、どちらなんでしょう?

狙って生きるほど器用じゃないので全部無意識だったけど、父親と毎週見ていた映画が下地にあって、漫画家になりたかった自分がいて、自分に足りない経験を求めて地雷を踏みまくった時期があったからこそ、「これを映画にしないでどうするんだ?」って思うようになりました。結構長い間ストリートという幻想を追いかけた結果、幻は消えて気付いたら後ろに道ができていたという(笑)。HIPHOPが好きで昔の俺と同じような環境にいる奴らは沢山いると思うし、死んじゃった友達や飛んでシーンからいなくなっちゃった奴らも沢山いたけど、そういう奴らの置き土産というか、路上に散らばった夢を拾い集めて映像に残すことで、今くすぶっている奴らの道しるべになったら良いな、なんて気持ちもありつつ。ちょっと湿っぽい話になっちゃいましたが、これからもTrue2 The Gameの精神で精進するので温かく見守ってやってください!

 

全3回のインタビューの締めくくりとなる今回は、最後にSITE自身が影響を受けた映像作品を紹介してもらいながら幕を閉じよう。

 

1. カラーズ 天使の消えた街/デニス・ホッパー監督(1988年)

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元々はLAのローカル・ギャングだったブラッズとクリップスの存在を世界中に知らしめた作品。刑事役のロバート・デュヴァルとショーン・ペンの演技も良いし、ギャングを社会問題として捉えて、美化せずにカッコ悪く撮っているところが流石デニス・ホッパーって感じだけど、結果的にはそんなメッセージは無視されて全米中にギャングが増殖するきっかけにもなってしまうという皮肉な結果も生みました。この映画ではブラッズとクリップスが黒人同士で殺し合っている横で、チカーノ・ギャングのホワイト・フェンスはまだジャンプ・イン(※ギャングに加入するための儀式)もしていない様なキッズとOGが一緒にたむろしていて、黒人のギャングとはノリが違うところをちゃんと書き分けられているのがポイントだと思います。

 

 

とはいえ、同じくLAを舞台にした『トレーニング・デイ』『エンド・オブ・ウォッチ』でのチカーノ・ギャングの描かれ方を観れば分かるけど、最近のサウス・セントラルとかコンプトン辺りでは数からして多いチカーノが一番凶暴だし、南米とのコネクションも含めて圧倒的な力を持つ様になっているので、一概にチカーノの方が人情味あふれるとも言い切れないんですが。ただ、昨年2HIGHくんに連れて行ってもらったコンプトンでハングアウトしたチカーノ・ギャングたちは、映画さながらの修羅場をくぐってきている奴らなのに本当に気がいいホーミーだったので、チカーノのタトゥーでよく描かれる2フェイスが象徴する二面性が彼らの素顔なのかなって気もします。いまだに年に何回かは観返すクラシックです。

 

2. 憎しみ/マチュー・カソヴィッツ監督(1995年)

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ジョン・カーペンターの『ゼイリブ』と並ぶオール・タイムベストな1本です。刑事の暴行に端を発する暴動から一夜明けたパリ郊外の団地で、警官の紛失した拳銃を拾った3人の移民の若者たちの1日を追ったフッドムービーなんですが、監督のマチュー・カソヴィッツがこの作品でカンヌ国際映画祭の監督賞を獲ったのが、まだ若干27歳の時で。DVDのスペシャルエディションにはメイキングと10周年の際に制作されたドキュメンタリーが収録されたボーナスディスクが付いていて、撮影当時のカソヴィッツの姿が見れるんですが、監督か出演者なのか分からないくらい本当にどこにでもいそうなB-BOYで、見た目からして親近感がありつつ信頼できる感じで。

 

 

これの1作前に撮られた初の長編映画の『カフェ・オ・レ』は、アップテンポな編集とか魚眼気味の画角がもろにスパイク・リーのフォロワー丸出しだったんですが、『憎しみ』では一転してカットも長回しが多めで、完全に自分のスタイルをモノにしている感じがします。オープニングで流れている暴動の映像が、この映画のアイデアの元になった実際の暴動のニュース映像だったり、主役のヴァンサン・カッセルはじめ、役名が役者の本名で配役されてて、更に俳優たちを撮影の1ヶ月前から実際のロケ地の団地で生活させたりして、徹底してリアリティーにこだわってるところが素晴らしいです。カラコレや照明に予算をかけないで画の統一感を出すために、敢えて白黒にしたっていう思い切りの良さもイケてます。

 

3. KIDS/ラリー・クラーク監督(1995年)

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これも説明不要のクラシックですね。公開当時はキャスパー役のジャスティン・ピアース(0:40~)とハロルド・ハンターの映画だと思っていたんですけど、いま観返すとこの作品を支配しているのはクロエ・セヴィニーだったんだなって改めて思います。男女共にほとんどのキャストが素人でこれが映画デビューだったのに、男たちは映画まんまのどうしようもない感じで、キャスパーもハンターもオーバードーズで死んじゃったりしている一方、クロエはファッション界にも進出して、この世代を代表する女の子たちのアイコンになったし、ルビー役のロザリオ・ドーソンもこの後、数え切れないくらいのヒット映画に出演して、ネトフリの『デアデビル』『ルークケイジ』でもいい役をもらってずっと活躍している。ラリー・クラークがどこまで意識的だったかはわからないけど、スケーターのどうしようもない(けど愛すべき)バカさ加減と、女の子の強さが全部そのまま映っている、奇跡のような映画だと思います。

 

 

2006年にLAに行った時に、ちょうどラリー・クラークが『キッズ』以来久々にスケーターを主役にして撮った『Wassup Rockers(邦題『ワサップ!』)』の試写会があって、港の倉庫みたいなところまで観に行ったんですが、会場に着いたらスクリーンの前にスケートランプを出してスケーターたちが滑っていて、ステージではパンクバンドがライブをしてて。夕方になって上映が始まってもスケーターはみんなランプの上で座って観ていたんですが、映画に出演しているスケーターたちがスクリーンに映るたびにみんながボードでランプを叩きながら大騒ぎするっていう、すごい騒がしい試写会で(笑)。ちょうどハンターが死んじゃった直後だったし、なんか感傷的だったりするのかなと思ったけど、そんなことは全くなくて。そういうピュアでバカなノリも含めて、いつの時代も変わらないスケーターの姿を見れて逆になんか救われたというか、あの環境で観れたのはすごく良い経験でした。

 

4. アタック・ザ・ブロック/ジョー・コーニッシュ監督(2011年)

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ロンドン郊外の団地に落ちてきたエイリアンと不良少年たちが戦うSFコメディで、タリブ・クウェリがこの映画にインスパイアされたミックステープを出していたり、結構HIPHOP界隈でも流行った作品です。

アメリカではバンダナがギャングを象徴するみたいに、ロンドンではフードを被っていると「あいつらは不良だ」って言われるんですが、ストーリーが進んでいくにつれてそんなステレオタイプなイメージが取り除かれて、最終的には不良少年たちを応援したくなっちゃうキャラクター造形が秀逸です。サウスロンドン生まれの監督が指導しているセリフまわしのアクセントがグライムのMCとも通じる部分もあって興味深い。

 

 

キャスティングの際に監督は演技が上手い子役よりも、役柄とキャラが近い素人の子たちを起用していて、衣装を選ぶ際にも一緒に決めたり、エンターテイメントでありながら演技を超越したリアリティがあります。キャストの面構えの良さでは『ストレンジャー・シングス』『スタンドバイ・ミー』にも引けを取らないくらい、本当にいい顔をした子たちが揃っているのもポイント高いです。

クリーチャーのデザインは毛むくじゃらな黒い図体に蛍光で光る牙があるだけで凄いシンプルなんだけど、その80’sっぽさもまた良い感じで。不良キッズ、団地、エイリアンと俺が好きな要素がてんこ盛りだし、一見典型的なB級ムービーだけど、最後のメッセージ的な部分は意外に社会派だったりして、子どもから大人まで皆が楽しめる良作だと思います。

 

5. ビューティフル・ルーザーズ/アーロン・ローズ監督(2008年)

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90年代中盤~2000年代前半にかけてアメリカで起こった、グラフィティ、スケートボード、サーフィン、HIPHOP、パンクがごちゃ混ぜになったアートムーブメントと、その拠点になったニューヨークのアレジッド・ギャラリーの軌跡を追ったドキュメンタリー映画の傑作です。バリー・マッギーマーガレット・キルガレンハーモニー・コリンマイク・ミルズトーマス・キャンベルマーク・ゴンザレスなどなど、今となってはそれぞれの分野の巨匠って言われている人たちの青春群像劇としても楽しめます。

この映画の中でも一番の中心人物で、初めて現代美術館でグラフィティの個展をやったTWIST(バリー・マッギー)と、90年代に「ON THE GO」っていうグラフ・マグを出したり、最近はMF DOOMのMVも撮ったりしているESPO(スティーブン・パワーズ)と、ビースティーのグランドロイヤルの像のキャラクターのデザインでも有名なREAS(トッド・ジェイムス)の3人が、2001年に渋谷のパルコギャラリーで『STREET MARKET』っていう企画展をやったんですが、ラッキーなことに俺は制作アシスタントとして1週間くらいずっと彼らと行動を共にすることができて。たくさん話もしたし、夜一緒に外に描きに行ったりしていたので、スキルやスタイルだけじゃなくてアートに対する姿勢とか、ものすごく影響を受けました。

その1年後くらいに代理店がこの映画に出ているメンツを大勢来日させた大きなイベントがあって、その時も俺はもちろん遊びに行ったんですが、どこを見てもヒップスターと業界人だらけで催し自体がすごいハイプに感じちゃって、ちょっと寂しいなと思っていたんですが、この映画の中で来日していたアーティストたちが「あれは日本の企業が俺らを作為的に神話にしようとした狂ったイベントだった」って言っていて、当時の俺が感じた感覚は間違ってなかったんだって確認できたのも嬉しかったです。

 

 

俺は絵本や漫画が好きなナードなのに、同時にハードコアなHIPHOPも好きだから、型にはまれない自分にコンプレックスを感じてた時期もあったんですが、このドキュメンタリーを観ると、ジャンルやカテゴリーにも属してなくても自分と創造性に正直であればどれだけいびつでも良いんだ! って思わせてくれる金言と素晴らしいアートワークが満載で、今でも自分のやっていることに自信がなくなりそうになったときに観返す大切な1本です。