’70年代の不良感漂うベニスビーチの路地裏の小道。そこでは波が悪くサーフィンができない日の暇つぶしにと、サーファーたちが似たような動きのできるスケートボードを遊び倒していた。ところが、そんな副次的な遊び道具に目を輝かせる少年たちが現れる。ローカルの名店「ゼファー・サーフショップ」にたむろしていたジェイ・アダムスやトニー・アルバといった、後に「Zボーイズ」を結成するオリジナルメンバーたちだ。

彼らがスケートボードを楽しんだのは、水の抜けたボウル状のプール。カーブ面を波に見立て、サーフィンのような動きでアグレッシブに滑りまくった“恐るべき子どもたち”は、スケートボードに革命を起こした。

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ボウルでエアをメイクするトニー・アルバ

以来、自由闊達な西海岸でカウンターカルチャーの最前線に立ちイノベーションを起こし続けたスケートボードは、滑り方というスタイルを超えて、カンパニーのあり方、ビジネスのあり方にまでイノベーションを波及させる。例えば、それは、資本家からの出資でスケートボードのカンパニーを立ち上げるという従来の常識を破壊してロドニー・ミューレンやスティーブ・ロコたちが設立した「ワールドインダストリーズ」であり、その傘下でマーク・ゴンザレスが設立した「ブラインド」だった。ちなみにそのブランドネームは、当時ゴンズが在籍していたビッグカンパニー「ビジョン」へのアンチテーゼであることは言うまでもない。

ワールドインダストリーズの名作「ラブチャイルド」より
ヘクティックのヨッピー氏も影響を受けたジョバンテ・ターナー

その後「ワールドインダストリーズ」から抜け出した反逆者のリック・ハワードがマイク・キャロルとともに立ち上げた「ガール」や「チョコレート」、サンフランシスコをレペゼンするという着想で個性をまとったトミー・ゲレロとジム・シーボーが設立した「リアル」などが生まれる。彼らが一貫して行ったのは、当時一世を風靡していたスポーツブランド「ナイキ」が打ち出す巧みなマーケティング戦略の逆張りだ。資本の小さいスモールブランドならではの表現と戦い方を華麗なまでに体現し、多くのティーンエイジャーを魅了した。以来、スケートボードのイノベーションは、スタイルとブランディングの両輪で美しく回りはじめる。

ガールの名作「マウス」より
天才中の天才、ガイ・マリアーノ

’00年代に入ると、そこにインターネットを中心とするIT技術が加わった。これまで巧みに時代時代の最新技術を取り入れたスケートボード業界が、こんなに素晴らしいツールを無視できるはずはなかった。しかし、その結果生じたのは、これまでのスケーシーンの大きな武器のひとつであった「ローカル性」の消失。つまり、どこでブランドないしはショップを運営するかが、以前ほど問われなくなったのだ。

そんな時代に一段と輝きを増すようになったのは、アメリカ東海岸の中心地、ニューヨーク周辺。これまでにも「ズーヨーク」や「シュプリーム」といったローカル性を武器にした人気ブランドが存在していたが、今では時代性を的確にキャッチした次世代ブランドやショップが立ち上がっている。今回は、中でも圧倒的な存在感を放つブランドとショップを紹介したい。

Bianca Chandon(ビアンカ シャンドン)

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LAスケートシーンのキーパーソン、スティーブ・オルソンのご子息、アレックス・オルソンが設立。「シュプリーム」クルーの一員であるという旧世代のエリートキャリアを持ちながら、写真家やDJとしても活躍するプロスケーターだ。ハウスの伝説的なクラブ「パラダイス・ガレージ」のレジデントを務めたラリー・レヴァンを敬愛し、「サキャスティック」のディレクターで無類のハウス好きで知られるポール・タカハシとも交流が深く、こうした動きがイチイチ次世代臭を感じさせてくれる。実店舗では、「ドーバーストリートマーケット」「ユニオン」「シュプリーム」といったハイセンスなセレクトショップで展開中。
http://biancachandon.com/

FUCKING AWESOME(ファッキン オーサム)

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’90’年代のニューヨークスケートシーンを牽引してきた、マーク・ゴンザレスに次ぐ鬼才、ジェイソン・ディルと写真家のマイク・ピスチテッリにより設立されたアパレルブランド。もちろんディルは「シュプリーム」のアイコンとしても活躍するニューヨークストリートカルチャーのキーパーソンでもある。そんな彼らがプロダクトを通して伝えるのは、ズバリ、アメリカのサブカルチャーのイルな側面。それをYouTubeやVimeoで映像作品としてバンバン発信するところに、今らしいスモールブランドのあり方が感じ取れる。
http://fuckingawesomestore.com/

LABOR SKATE SHOP(レイバー スケートショップ)

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マンハッタンに構えるスケートショップで、現在ニューヨークのスケーターから圧倒的な支持率を誇る人気ぶり。あまり大きな声では言えないかもしれないが、店前のスケーターのたむろぶりを見ても「シュプリーム」を超える存在感を放っている。「LESスケートパーク」のローカルたちをサポートしていることでも有名で、ショップオリジナルのプロダクトの完成度の高さも人気の理由のひとつ。
http://www.laborskateshop.com/

Quartersnacks(クウォータースナックス)

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イーストコーストを中心としたスケートシーンを、スタイリッシュな切り口で紹介する次世代ウェブマガジン。「シュプリーム」周りのニュースクールなスケーターのスタイルが気になるなら、ぜひチェックしておきたいメディア。撮って出しに近い映像からは、ニューヨークの“raw”な空気が感じられる。洗練を感じるオリジナルのアパレルや、ローカルスケーターたちの力の抜けた、それでいてスマートなスタイリングから、NY=ビッグアップルという街が持つヴァイブスを感じてとって欲しい。
http://quartersnacks.com/

次回は、アメリカで誕生したスケートカルチャーを独自に解釈したUKで巻き起こったイノベーションの歴史を、伝説のショップ「スラムシティスケーツ」を中心に紐解いていきたい。