21世紀の現代社会では、あらゆることが“自由”に向かいつつある。……と思われがちだが、今なお世界で続く“性奴隷制”から目を背けることはできない。

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<techinsider.io>によると、国連の安全保障理事会(国連安保理)のメンバーのもとには紛争地帯で起きている、おぞましい実態が報告されていた。そのあまりの残虐さに、思わず涙する人もいたという。

2015年12月、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の性奴隷だったナディア・ムラド・バシー・タハさんは自らその実態を告白。彼女は現在、人身売買からの生還者を代表する親善大使に任命されている。彼女が性奴隷の実態を告白してから、安保理は人身売買についての報告や、それに対して何ができるかを模索していた。事態は刻一刻と悪化していたため、早急に動いていたのも事実だ。

当然、現在の国際法では奴隷制度をいっさい認めていないが、4,580万もの人々が奴隷状態に置かれていると推定されている。武装集団は長らく、弱い立場の人々を性的な搾取や兵役、そして建設や清掃、鉱山、農業などの強制労働に就かせてきた。東南アジアでは、紛争地帯から逃れてきた人々が、我々が日常生活で口にする魚を獲ったり、加工する仕事に就かされるケースもあるようだ。

その一方でISやナイジェリアのイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」は、第二次世界大戦以降では最悪ともいえる規模で性奴隷を大々的に組織化している。

一説によるとISでは5,000人を超えるクルド系少数派ヤジディー教徒の女性や男性、そして子どもたちが性奴隷として扱われている。ISは堂々と奴隷制度を展開し、なんとマニュアルまで作っているというのだ。さらに子どもたちは、無理やり“自爆要員”にされることも珍しくない。

とはいえ、これはイラクやシリアだけの問題ではない。紛争同様、奴隷の問題は国際的な広がりをみせているからだ。国連の調査委員会では最近になって、アルジェリアやオーストラリア、ベルギー、エジプト、イラク、カザフスタン、リビア、モロッコ、サウジアラビアなど複数の国の人々がISの奴隷制度や人身売買に関与しているという事実を把握している。これはボコ・ハラムら他の武装集団でも同じことだ。

そういった非人間的な制度が世界的に広がっている一因として考えられるのは、実はソーシャルメディアである。国連の過去の報告によると、戦闘員は暗号化されたコミュニケーションアプリ<Telegram>を使ってオンラインで奴隷のオークションを行ない、ヤジディー教徒の女性たちの年齢や婚姻状態、現在地、価格などと共に写真を公開しているという。

つい最近でも、ISのメンバーが奴隷にさせられた女性を<Facebook>で売買しようとしたことが明らかになった。レバノンにいるシリア難民の女性たちがメッセンジャーアプリ<WhatsApp>で取引され、ISはその他のアプリでも同様の展開をしているという。

最新の制度(=SNS)を通じて、古き悪習(=奴隷制度)が再び広がりをみせている今、これに対して安保理ができることはあるのだろうか? その答えは、国連大学が発表した新たな報告書にあるようだ。世界中の関連諸機関からの100人を超す専門家の見立てでは、対策は決して少なくないと見られている。

まずは、その人権蹂躙に対する断固とした非難と、関わりを持った国民に対する刑罰の強化を各国に求めることが挙げられる。さらに、ISの戦争犯罪や奴隷といった、人権に対処する特設の国際法廷という手もあるだろう。

また、武装がらみの紛争にまつわる人身売買を監視し、これを阻止することも効果的。特定の集団の関与を、オンラインおよび現実社会の両方から監視するのだ。その一方で、紛争により住む場所を追われた、6,500万ともいわれる人々を保護することも可能。こういった弱い立場にある人々は、人身売買のターゲットになる危険性が特に高いからだ。中でも、人身売買が横行している場所などから人々を守ることも選択肢のひとつだろう。

安保理の可能性はそれだけではない。金融やテクノロジー、人事などの部門と提携し、紛争地帯での人身売買を未然に防ぐ仕組みも構築できるはずだ。実際、安保理は紛争地帯の鉱石採掘で同様の手段を実施しており、人身売買でも同じことができるはずである。

テクノロジー部門には、さらなるけん引役の役割がある。SNSのプロバイダーは位置情報が利用できるはずで、人身売買の危険にさらされている人々を特定し、それを警告することもできるだろう。

ロンドン警視庁は、シリアからの移民女性が(ISに参加しようとする)外国人に向け、人身売買などIS支配下での危険性を訴える動画を公開した。SNSのプロバイダーはこういったメッセージを、届けるべき人たちに展開することは可能なはずだ。

かつて数カ月にわたって性奴隷にされた経験を持つナディア・ムラドさんは、「多くの言葉を費やしてきましたが、これらの対策はほとんど為されていません。3,500人ものヤジディー教徒が囚われの身となり、ひどい犯罪行為にさらされているのです」と語っている。

これ以上、非人道的な出来事が起こるのを防ぐため、協力機関や私的部門などと手を携え、今こそ国連安保理が行動を起こす時だ。そういったアクションがなければ、国連での(被害者の勇気ある行動に対する)称賛の拍手はむなしく響くだけだろう。

※原文:国連大学 国連事務局 ジェイムス・コッケイン

http://www.techinsider.io/sex-slavery-on-whatsapp-2016-9