■「モジュラーシンセ」って何?
お宝機材が山と積まれたNine Inch NailsやDeadmau5、Aphex Twinなどヒップスターのプライベートスタジオ。その一角に、ツマミがズラリと並びカラフルなケーブルがスパゲッティーの様に絡まった一風変わった機材の写真を見たことはないでしょうか。あれが今、世界的にちょっとしたブームになっている「モジュラーシンセサイザー」です。
この通称「モジュラーシンセ」は、様々な「モジュール」と呼ばれるパーツをくっつけたり、並べ替えたり、ケーブルで繋いで電圧で制御することで、鍵盤を使ったいわゆる「音楽」の演奏はもとより「ボヨヨ~ン」といった効果音(※)を出したり、さらには難しい顔をしてツマミを弄れば、シュトックハウゼンやメルツバウになりきったりも出来ちゃう。海外では”expensive noise machine”とも呼ばれる、まあ「大人のレゴブロック」ってところでしょうか。
※余談ではありますが、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するニュータイプが閃いた時の音は70年代のモジュラーシンセARP2600で作られたものです。
Alessandro Cortini – “happy”
Nine Inch Nailsのツアーメンバーであり、モジュラーブームのキーパーソンAlessandro Cortini によるBuchla200eシステムの演奏。Cortini自身のユニット、Sonoioのアルバムにも収録されている曲ですがこちらのバージョンはデモ音源ならではの勢いがGood。
Richard Devine On a Make Noise Shared System
こちらもキーパーソンの一人、Richard DevineによるMakenoise Shared System演奏。2014年のtokyo modular festでもキレキレのパフォーマンスを見せてくれましたね。
“I Dream of Wires: Hardcore Edition” 2013 official trailer
ドキュメンタリーフィルム“I Dream of Wires” のトレーラー。モジュラーシンセ流行には、ドローンや3Dプリンターの普及と共通の背景があります。
それは、1.インターネットの普及によってマニアックなビジネスが成り立つようになった。2.フリーのCADソフトの普及によりアマチュアやガレージメーカーの設計スキルが向上した。3.Youtubeなど気軽に自分のデモ音源を発表する場ができた。つまり新世代のDIYカルチャーと言えるものなんですね。
■個性的なモジュール達をご紹介!
筆者のユーロラックRIG。1つのシステムに異なるメーカーのモジュールが混在するのが特徴。
さてモジュラーシンセにはいくつかの規格がありますが、最も勢いがあるのが独DOEPFER社の仕様を原型とした”ユーロラック”規格。世界中のガレージメーカーから毎週のように新しいモジュールが発表されており、さらにはRolandやMoog Musicなど老舗シンセサイザーメーカーまで巻き込んだムーブメントを作り出しています。
「じゃあどんなモジュールがあるんでしょうか?」と感じたアナタ!この底なし沼のような魅力を持ったカルチャーにハマりかけているアナタのために、筆者の所有しているユーロラックのモジュールの中から、特に特徴的なものを紹介していきます。
ノースカロライナ州アッシュビルを本拠地とするガレージメーカー、Makenoiseによる”Complex Waveform Generator”モジュール。激レアなビンテージモジュール、Buchla 259をモデルに作られており、プリント基板には「two five nine was here」のシルクスクリーンも。同社の手書き風パネルデザインはモジューラーシンセのDIY文化との関係を想像させます。
Makenoise 公式サイト:http://www.makenoisemusic.com/
自社製品のユーロラックモジュールの他、レコードレーベルも運営しており前述のAlessandro CortiniやRichard Devine等の作品をリリースしています
Music Thing ModularことTom WhitwellによるDPOデモ動画。
フランスのMutable Instruments製「マクロ」オシレーターモジュール”Braids”。インド風イラストと絶妙なカラーリングのノブとは対照的に内部構造はデジタル技術の結晶なのです。wave table合成から懐かしのCASIO CZシリーズのエミュレートまで40種類のアルゴリズムを搭載し、さらにはファームウェアのアップデートにより進化し続ける姿はまさにMutable(変容する) Instrument。徹底したオープンソース志向で、ファームウェアはもちろんハードウェアのCADデータまでがGithubで公開されています。
Mutable Instruments 公式サイト
http://mutable-instruments.net/
Braids – Heavy Modulation Wavetable Overview
SurachaiによるBraidsのデモ
■なんと次回に続きます!
今回はユーロラックを中心に駆け足で紹介しましたが、次回はモジュラーシンセを巡る東西論争、そして気軽にモジュラーシンセの世界を体験できるスマホ向けアプリを紹介いたします。乞うご期待〜!