前回はモジュラーシンセなるものが世界規模でちょっとした流行になっているらしい、という話を書きましたが、いざ「やってみよう!」と思っても、ケースに電源に必要最低限のモジュールを揃えたとして十万前後の費用が必要になってきます。

なぜそんなに高価なのかと言うと、基本的にブティックメーカーが小ロットで生産しているから。そんなモジュラーシンセサイザーの世界ですが、スマホやタブレットのアプリを利用することで比較的気軽に体験することができます。そんな訳で今回は、モジュラーシンセの世界を手軽に体験できるアプリを紹介していきましょう。

■極私的おすすめアプリ3選

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『Modular』
iPhoneとiPadで利用できるモジュラーシンセアプリ。直球なネーミングですが、パネルデザインも渋く、音の方も中々の雰囲気。無料アプリですが、課金によりモジュールを追加することができます。

Introducing Modular – The synth app for iPad and iPhone:開発元によるModularアプリの紹介動画

『Modular』のダウンロードはこちらから→ https://itunes.apple.com/jp/app/modular-synthesizer/id599439196?mt=8

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『analogkit』
iPad専用アプリ『analogkit』。オブジェクトをグループ化することができるので複雑なパッチ(=配線)の作成も可能です。いわゆる「波形」をビジュアルで確認出来るオシロスコープが使えたりもする本格派。

AnalogKit – Getting Started:開発元によるAnalogKit チュートリアル動画

『analogkit』のダウンロードはこちらから→ https://itunes.apple.com/jp/app/analogkit/id984597969?mt=8

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『iVCS3』
EMS社のシンセサイザーと言えばピンクフロイドやブライアン・イーノ、安部公房らが愛用していたことで知られていますが、なんと名機『VCS3』をiPad上で模したアプリがあります。音声ファイルを読み込んで内蔵のフィルターで処理したりも可能。iPad専用。

iVCS 3 for iPad a Demo and Tour Around This Amazing App:iVCS 3 紹介動画

『iVCS3』のダウンロードはこちらから→ https://itunes.apple.com/jp/app/ivcs3/id665703927?mt=8

■アプリの次は実機をチェックしてみよう

さて、今回紹介したアプリはどれも非常に良く出来ているのですが、正直言って画面上での作業はストレスフル。やはり実機には実機の魅力があります。アプリを触ってみて興味が出てきたら、下記のショップや通販サイトを覗いてみてはいかがでしょうか。

『FiveG music Technology』

原宿の竹下口にある老舗シンセショップ。モジュラーシンセもDoepferを中心に大量に展示販売している。
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-2 ル・ポンテビル4F
営業時間 : 12:00~20:00(火曜定休)
URL:http://www.fiveg.net/

『Clockface modular』

日本語で買えるモジュラーシンセ専門の通販サイト。モジュラーシンセの使い方や音の出し方を丁寧に解説したコーナー「How to Modular」は必読。
URL:http://www.clockfacemodular.com/

 

■モジュラーシンセ「東西」論争勃発!

この辺でちょっとウンチクを。シンセサイザーの主流の歴史ではMoogを頂点に、ARPやRoland、KORGなどの国産メーカーなど、平均律をはじめとする西洋音楽理論によって組み立てられた楽譜を「演奏」するための楽器として捉えられてきましたが、そういった用途でのモジュラーシンセサイザーは80年台を通して、ヤマハ『DX7』などの利便性に優れたデジタルシンセサイザーにとって変わられて行きました。

一方で偶然性を取り入れつつ機械自身がフレーズを生み出したり、平均律から外れたマイクロチューニングによる音楽を演奏するための装置がシンセサイザーの黎明期から存在しました。60年代にサンフランシスコテープ音楽センターから生まれたメーカーであるBuchla、その影響を受けつつも独自の進化を遂げたSerge Modularなどがあり、Moogなどの「東海岸スタイル」に対して「西海岸スタイル」のモジュラーシンセサイザーと呼ばれています。

5uchla 100 システム。一般的な鍵盤の替りにタッチプレートが設置されており、「西海岸」スタイルシンセサイザーの特徴の一つとなっている。(※画像引用元:http://en.wikipedia.org/wiki/Don_Buchla#/media/File:Buchla_100_series_at_NYU.jpg)

 

6『カッコーの巣の上で』の作者、ケン・キージーが所有するマジックバス「FURTHUR号」に積まれた『Buchla 100』システム。サブカルチャーとハイカルチャーの距離が近いのはアメリカならでは。(※画像引用元: http://en.wikipedia.org/wiki/Don_Buchla#/media/File:Buchla_Ken_Kesey.jpg)

 

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レニングラードの美術館のために制作されたとされる『Serge Modular』。サイケデリックなパネルデザイン。(※画像引用元: http://www.serge-fans.com/)

現在主流フォーマットとなっているユーロラックの中で、最も勢いを感じさせるメーカー・Makenoiseは、そういった流れを汲んだモジュールを開発しています。例えば同社の人気商品である『Maths』のマニュアルには、『Buchla 281』と『Serge USG』のマッシュアップであることが明記されています。ユーロラックをはじめとする現在のモジューラーシンセサイザーシーンは必ずしも「演奏」を目的としたものではなく、「西海岸スタイル」の影響が色濃いといえるのではないでしょうか。では、今回はこの辺で。