凶悪なギャングや麻薬カルテルがはびこるメキシコで、5年ほど前から独立した小国のような存在になっている街がある。

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メキシコシティからほど近いチェランという街は、政治家も警察も汚職まみれだという。そんな現状を憂いた住民たちは、武器を持って立ち上がった。今では「チェランの街に続け」と独立しようとする村や街が増えているそうだ。

2011年、麻薬カルテルらの犯罪組織が、アボカド農園を作るために森林伐採を始めたことが事の始まりだという。町議会の中心人物マーガレット・ロメロさんは「夫たちは農業を営み、家畜の世話をしています。もし水がなくなったらどうなってしまうのか?」と言う。太古から綿々と続く森林の急激な減少は水にも大きく影響し、街の人々は牧畜や農業が不可能になり、街は経済的に崖っぷちに立たされてしまうのだ。

マーガレットさんは、かつて数名の女性たちと共にギャングたちのところへ直談判しに赴いたそうだが、武装した男たちに追い返されてしまった。そこで彼女たちが考えたのが“検問”だった。地域全体で協力して、街へ出入りする車両や人間を厳しく監視するという計画に打って出たのである。

そして同年4月、勇敢な彼女たちによる検問は功を奏し、伐採労働者たちの車両を検挙して数名を人質として捕らえることに成功。復讐にやって来るであろうギャングたちに備え、街の教会は危険を知らせるために鐘を鳴らし、人々はマチェーテや棍棒、石など、武器になるものなら何でも手に取り、立ち向かった。これは、ギャングに捕らえられた街の人々を奪い返す戦いでもあったのだ。

しかし驚いたことに、敵の陣営には地元の政治家や警察も顔を揃えていた。マーガレットさんは当時のことを「まるでホラー映画のようで、悪夢のようだった。でも私たちが執れる最後の手段だった。やれることをやったんだと思います」と、しみじみ振り返る。

その後、警察や政治家は犯罪者と共謀したとして街から追放。チェランの4つの地域から各代表が選挙により選ばれ、街は地元の男女で構成された自警団と議会を発足させた。今も同地域には厳しい検問をクリアしなければ通ることはできない。批判的な声も上がったが、この街は5年も現体制を維持しており、昨年は殺人も誘拐事件もゼロ件という快挙を成し遂げた。そして、不当に伐採された17000ヘクタールぶんの木々は現在、3000ヘクタールにもわたって種を蒔かれ、自警団が土地をパトロールしている。

今やメキシコ全土の中小規模の街から理想のモデルケースとして注目されているチェラン。他の地域でも同じような施策が行われているというが、チェランの人々いわく“地域の人々や家族たちの団結力”が成功の秘訣とのことで、地元民や家族が結束して暮らす密接な環境が必要不可欠だという。

 

The Mexican Town That Threw Out Criminals, Politicians and Police